雲海にそびえる槍ヶ岳 
クリックすると新しいウィンドウで開きます 戻る
タイトル; 

45歳から蓄積が始まる!

アルツハイマー予備軍

 平成26年5月作 

日本では現在、認知症患者は推定462万人。その約7割がアルツハイマー病。脳が萎縮して記憶力が低下し、やがて運動能力も奪われていく。30年後には認知症の患者の数は1000万人を突破すると推定されている。このままだと、後期高齢者の75歳になると2人に1人の高齢者がアルツハイマーになることを物語るかもしれない。アルツハイマーなんて、他人事と思っているが、一度その世界に足を踏み入れた時には、もう自分ではコントロールを失い、自立した生活ができなくなる。しかもこれまでは、進行を抑えるだけで効果的な治療法も薬も開発されていなかった。 

しかし、驚くことに最近アルツハイマー病になるかどうか予測できるようになったという。すでに遺伝子検査が一般市民に普及しているアメリカでは、99ドル(日本円で12,000円相当)でアルツハイマー病を始め120種類の病気のリスクが分かる遺伝子検査キットが販売され、検査会社にわずかな唾液を送るだけで、その結果をインターネットで1ケ月後に知ることができる。何故そこまで予測できるようになったか。最近、ある研究により、アルツハイマー病を引き起こしていた2つのタンパク質の働きが明らかになったからである。 

アメリカ・セントルイスにあるワシントン大学を中心としたアメリカ、イギリス、ドイツなど150人を超える研究者が参加するDIAN(ダイアン)国際研究チームが、遺伝によって極めて高い確率で、ある年齢になるとアルツハイマー病を発症する家族性アルツハイマー病の人たち300人に注目し、定期的に脳の画像、血液、遺伝子まで徹底的な検査して、アルツハイマー病を発症させる2つのタンパク質の蓄積を発見した。 

一つは、“アミロイドβ(ベータ)”というタンパク質で、発症まで25年も前から少しずつ溜まり続け、神経細胞のシナプスを傷つけていた。 

Img_7597

神経細胞のシナプスを傷つけるアミロイドβより 

もう一つは、傷つけられた神経細胞の中に発症の15年前から蓄積される“タウ”という別のタンパク質が、神経細胞を死滅させていた。 “タウ”は、記憶の中枢と言われている海馬を破壊し、海馬全体を萎縮させていた。そのため記憶力が低下しアルツハイマー病を発症するという。   

アルツハイマー病の発症は70歳を超えると急に増えていくが、70歳の25年前というと45歳から、脳の中にアルツハイマー病の兆候が進行しているのである。 

2014.1.23 ?A???c?n?C?}?[?a 001.JPG

NHKスペシャル『アルツハイマー病をくい止めろ!』より 

軽度の物忘れの多くなる頃には、なかり進行している 

発症まで25年もかけて溜まり続ける“アミロイドβ”。海馬の神経細胞にとどめを刺す物質“タウ”、ようやくアルツハイマー病進行のメカニズムが判明して、攻め落とすターゲットが特定され、これからいよいよ治療そして予防の世界が広がることになるという。原因物質を分解する治療・薬の開発と攻撃される海馬を鍛えて萎縮を食い止める方法である。

たとえば、イギリスの大学が開発したLMTX(エルエムティーエックス)という薬は、海馬を破壊するタウを分解する働きを持っているが、まだ臨床試験が最終段階だという。 

日本では、国立長寿医療研究センターの島田裕之さんの研究チームが、発症する直前の物忘れの多い軽度認知症の人を対象に海馬の萎縮を食い止める予防プログラムを開発した。簡単な計算やしりとりをしながら運動することで海馬に負荷をかける。すると新しくできた神経細胞同士のつながりが増して活性化し、海馬の神経細胞が再生されることが明らかになってきている。

九州大学環境医学の清原裕さんの研究チームによると、日本のアルツハイマー病の不気味な増加の兆候の背景には、ライフスタイルの変化があるのではないかという。中でも食生活の変化が影響している可能性がある。日本人の食生活が欧米化し、動物性脂肪の摂取が多くなり、食後の血糖値が高くなった。血糖値が高い人ほどアルツハイマー病の危険度が高いという。糖分控えめに心がけ、高齢期になっても適度なウォーキング等が、いかに大切か反省する毎日である。 

          2014122日付 中日新聞