薬師岳  

クリックすると新しいウィンドウで開きます 戻る
 
タイトル; 
 脱原発という経済成長への道
 平成24年10月 作 

 

東日本大震災後、あの悲惨な光景をみて、多くの日本人が、明治維新、戦後と並んで、一つの時代の転換期を迎えたと感じたに違いなかった。 

余りに大きなダメージから、古い体質が大きく壊れなければ、この惨事は乗り越えられない、ある意味リセットを余儀なくされることを求められたのではないか。それが一年たっても復興が遅々として進まず、変わろうという雰囲気すら失われ、旧態依然であることに一層の閉塞感が募った。  

ところが、一〇月中旬に実施された中日新聞社と愛知中小企業家同友会のアンケートをみて、やはり時代の転換期だと確信したのは私だけではなかったに違いない。「二〇三〇年代に原発稼働ゼロを目指す」という政府目標をめぐり、原発ゼロを支持する意見がほぼ六割を占めた。原発ゼロが国内経済に及ぼす影響は「プラスになる」と「変わらない」を合わせて五割を占め、半数が経済への悪影響を否定した。「脱原発は日本経済にマイナス」と聞かされていたから、まさに驚きだった。大企業を束ねる経団連は「燃料の調達費がかさみ、電気料金の値上げや企業の海外進出、雇用の悪化を招く」などとして原発ゼロに反対していた。これが経済界の総意だと信じていたが、それは私の大きな誤解であった。全国屈指の「モノづくりの拠点」である愛知は、経済悪化を理由に原発ゼロを拒否する経団連など中央財界との違いが鮮明である。そこには、政府の巨額の予算がもたらされる原発産業が原子炉メーカーやゼネコンなどの大手中心であるのと対照的に、原発ゼロによって、自然エネルギーの開発に無数の企業が取り組むことで日本経済を支える力が生まれる。度重なる円高をコスト削減や技術開発で乗り越えてきた経営者にとって、エネルギー政策の転換がむしろビジネスチャンスにつながることを感じ取っていたに違いない。日本人の器用さと勤勉さは、多くの経営者に、今こそ新エネルギー技術開発の好機の道を暗示しているのであろう。 

再生可能エネルギーと省エネ技術の開発による経済成長にこそ日本の未来があるのかもしれない。勇気のいる選択だ。いままで歩んできた道を全く否定するのではなく、新しい時代を受け入れる勇気を、サムライジャパンやなでしこジャパンを応援するように、応援したいと思う。  

    司法書士 矢田良一