燕岳朝焼け 

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心臓病、第2の心臓を生かせ! 

 平成25年11月 作 
毎年700万人以上の人が、心臓病で苦しみ亡くなるという。世界での死因の第1位は、心臓病である。年々増加している心筋梗塞は、コレステロールにより心臓の血管が詰まり、その先の筋肉が壊死する。心不全では、筋肉の収縮が弱り、心臓が肥大化し、機能がマヒする。また、不整脈は、心臓の筋肉の収縮のリズムが乱れ、痙攣(けいれん)を引き起こす。驚いたことに、心臓病は人類特有の病で、サルを含めて哺乳類には、心臓病の病は稀であるという。 
一体それは、何故か。  
進化医学からすると、その原因は、700万年前の人類の直立歩行にまで溯る。ハ虫類をはじめ、多くの動物が心臓の位置とからだ全体に高低差が少なく、血液を全身に送るポンプの役割をする心臓はほぼ水平方向に送るだけでいいが、人類だけは、からだが縦に長く、重力により下半身に溜まりやすい血液を全身に巡らすために心臓に大きな負担が強いられる。一日に10万回の拍動をする筋肉の収縮は、毎日ドラム缶40本分の血液を全身に送り出している。血管の長さは10万キロ。進化した人類の心臓は非常にタフな臓器になったが、支障をきたしやすい宿命が隠されていた。直立歩行は、両手が自由になり、道具を使い、併せて脳も発達し、あらゆる進化の出発点であったが、立ち上がったことで心臓に過度の負担がかかり、心臓病という宿命を背負うことになった。 
もう一つは、コレステロールである。コレステロールが血管を塞ぐところには、Gc(N−グリコリルイノラミン酸)という物質があった。Gcは血管で免疫反応を起こす。ところが、人類以外の動物は、体内にGcを持っており、免疫反応を引き起こさない。それは、人類の進化の過程に秘密があった。人類の脳は神経細胞から成長を促す物質を分泌し、細胞のネットワークを発達させてきたが、Gcがあるとその働きが抑制される。脳が巨大化するために270万年前にGcを失う必要があったという。その代償として、以降Gcは異物とみなされ、心臓の血管で免疫反応を起こし、炎症となり、血管の壁を傷つける。そこにコレステロールが溜まり、血管が詰まってしまい、心筋梗塞が頻繁に発生する。 
この二つの人類の宿命とどう向き合うか。 
一般的には、コレステロールを多く含む肉類を食べ過ぎたり、酒類の飲み過ぎに気をつけ、コレステロール値に気を配ることが大切といわれているが、最近の研究で明らかになったことに、足を動かす運動に注目し、歩くことがいいという。歩くと足の筋肉が静脈を締め付け、血液を上に引き上がる力を助けてくれる。まさに、足は第2の心臓である。歩くことが負担の増した心臓を補う働きをし、心臓病の発症を少なくし、心臓病の治療にも取り入れられている。 
直立歩行が人類の進化の出発となり、心臓への過度の負担が始まった。さらに脳の巨大化が心臓の負担に拍車をかけ、人類特有の心臓病を引き起こしたが、その弱点を補うのは、第2の心臓といわれる足を生かす歩く習慣にあった。                                                                                             2013/11/10