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 タイトル
生き切られた江坂正治先生を偲んで!
     
 平成25年6月 作 


見送る日の朝は、哀しみを包み込むようにいつも静かに明ける。その日の朝も夜明けを待たずに目が覚め、暗闇が明るくなるとともに、一日が明けた。いつもと変わらない朝なのに、この静けさと落ち着かない雰囲気は何だろう。きっと私の中で一抹の後悔を認めざるを得なかったからだろう。そしてご家族の方々の送り切ったあとの無念さと充足感で厳かに終わる。  

世界の至るところで紛争が絶えない。その度に何十人・何百人と人の命が失われていく。ほとんど毎日といっていいくらい新聞の記事を埋めている。どの死亡の記事を読んでも特に感じることも少なく、哀しみが込み上げてくることもない。しかし、たった一人の人間の死がこんなに淋しい出来事だったのだ。 

あまりにも突然の訃報。ほんの5日前にも電話で法律相談の日程の連絡を受けていたのに、もう先生はこの世にいない。 

江坂先生は、いつも物静かで、心を取り乱すこともなく、落ち着いてみえた。人と群れることがなく、目立たないけれど、存在感のある方だった。江坂先生から受け継ぐものがもっとあったに違いないし、先生は伝えいたいものがさらにあったに違いない。私がこれから引きずっていく小さな課題である。 

25歳から65歳までの40年間、亡くなられる数日前まで現役で“司法書士人生”を生きられた。昭和の時代からいち早く裁判事務に未来を切り開き、認定司法書士の時代になって1期生として資格を取られた。司法書士の新しい時代の幕開けを実感され、安城市役所での“司法書士による法律相談”の道を切り開かれた。しかし、この5年間というのは、病魔の再発の不安との闘いの中、1日1日が生きる営みそのものであったろう。決して長くはないが、65歳という密度の濃い一つの人生を生き切られた。 

江坂正治先生のご冥福を心からのお祈り申し上げます。     合掌